木更津駐屯地航空際

木更津駐屯地航空際
2019年12月8日木更津駐屯地航空際にて撮影

2011年4月18日月曜日

ザ・ジャパニーズ 読了


ザ・ジャパニーズ 読了
原題:THE JAPANESE エドウィン・O・ライシャワー(EDWIN O.REISCHAUER)/著 國弘正雄/訳 文芸春秋/刊 19790610第1刷1600円 
 雑誌『アフタヌーン』に連載している「おおきく振りかぶって」は登場人物達の名字や舞台となる県営野球場名が現実の地名と同じであり、背景も舞台となっている市民にしていれば見慣れた風景が描かれいます。そして同じく連載している「宙のままに」も実はおお振りと同じ市内を舞台にしていたとは知りませんでした。会社同僚に先日教えられるまで気がつかなかった。双方単行本を買うほどのめり込まず連載もじっくりと読んではいませんでしたが『アフタヌーン』誌上で一話から知っていたし、アニメも一応見てはいたのですが。不甲斐なし…。同じく連載している「秒速5センチメートル」原作者の新海誠も原作アニメの作中で市内ターミナル駅のシーンや、NHKみんなのうたでの風景カット、そして監督デビュー作での駅前カットと住んでいるかは別にして生活圏としているのは間違いないでしょう。まあ、都内へ約30分の首都圏の大都市ですから人口規模から考えても業界関係者が少ないわけはないのでありますが、小さなナショナリズムをくすぐられます。

 さて「ザ・ジャパニーズ」の話。

 「将来への展望は、過去を正しく理解しているかどうかによって決まるのが常である。」(424p)

 大著でです。
 アニメやマンガが注目されたせいか、外国人が書く日本への興味が湧き、色々と読んでいるのは当ブログおよび前ブログのバックナンバーの通りです。日本人による日本人論だと生臭いと云うか、作者の作者の出身地域や階層により立ち位置が変わり述べる事が変わるのは当然であり、その背景が文章から透けて見えるのが日本人の一人としてカンに触ります。その点外国人による日本人論は主観的であればあるほど視点の変化を楽しめます。
 本書は30年以上も前に書かれたにも関わらず、その情報収集の幅広さと的確な分析は。今現在の日本の問題点を鋭く突いています。拙者の嗜好から云えば、防衛庁が防衛省昇格問題や小学校における英語教育問題は30年以上も前からの動きだったのかと驚きです。そして
「世界中のことを広く教える学校は、他にあまり例をみない。」(402p)、
「日本人が触れる国際報道の方が、世界の他の国民より平均して多いといえる。」(同)、
「日本の科学者は専門分野の第一線にあり、人文・社会科学者も西欧の知的傾向に通暁している。」(同)、
「流行であれ、スタイルであれ、ファッションであれ、世界的なものはたちまち日本全土を席巻してしまう。その速度と徹底ぶりとは、どの国にもおとらない。」(同)、
「西欧音楽にしても、本家本元に負けない質と量とで、手に入れることができる。」(同)
「世界中の芸術は広く知られ、しかるべく評価されている。」(同)
「西欧各国、中国、その他世界いずれの国の珍味佳肴も、都会地なら賞味することができ、その質は絶品に近い。」(同)。
これらが21世紀に入り書かれた日本論ではなく、バブルすらも未だ未経験であった日本の描写だとは到底信じられません。著者ライシャワーが書いた後一世代分の年月を経て、インターネットと云う便利な道具が世界各地に行き渡るようになって初めて、著者の言葉の価値に気がつけたことでしょう。
 アニメやマンガや技術やらその他で日本を勉強しようと思い立った人々が手にするテキストとして本書が使われているのだと考えられます。これほど的確な日本を総括的に紹介した本が他にあるでしょうか。しかしながら、日本人女性の奥ゆかしさの描写に関しては、恐らく著者ライシャワーが接する事の出来たハイソサエティな人々を見た話であり、中流階級以下の一般的日本人とはそうそう接触する機会がなかったのではないかと思わされます。しかし、日本にある種の夢を持ってこの本をテキストとして読んだ場合“ヤマトナデシコ”への憧憬がいかばかりになることか、まあ昨今日本のアダルト産業が世界進出しているのでソウソウ妄想ばかりとも思えませんが、著者ライシャワーにも得手不得手があるものだと思わざる得ません。
 社会学系の学生・元学生ならば必読の書です。読む価値のある本だと断言します。少々お高いですが買って損はないでしょう。学生さんなら図書館で読んで下さい。大学図書館なら必ず所蔵しているでしょうし、もし公立図書館で所蔵していない図書館があったら必ず備えるよう云って下さい。

 冒頭文章の続き
「過去の流れが正しく補足されさえすれば、これが将来もひきつづき継続するであろう、と予測してもそうあやまることはない。」

0 件のコメント:

コメントを投稿