木更津駐屯地航空際

木更津駐屯地航空際
2019年12月8日木更津駐屯地航空際にて撮影

2010年7月27日火曜日

借りぐらしのアリエッティ 観了

借りぐらしのアリエッティ 観了
 夜帰宅し玄関を上がると足元でセミの断末魔が聞こえて飛び上がった。いつの間にか瀕死のセミに憑かれていたらしい。こちらとしては穏便で出て行ってもらいたいのだが、末期を私の家で迎えようと必死で玄関の中を逃げ惑う。格闘すること数十分、隣の家の玄関にブチ当たり動かなくなった。
 これが小人だったら、追い出すような事は絶対しまい。もし少女であったならプロポーズすらしかねん。
 さて、前置きはこのくらいにして。
 数代にわたり旧家の床下で暮らす小人一家と、少なくとも四代にわたり小人の存在を信じる一家との関係の終焉を描く長編劇場マンガ映画。原作を知りませんが、シチュエーションだけを借用した、恐らく宮崎駿風に換骨奪胎された作品に仕上がっているのだと思います。
 小人と人間の視点の差異を上手く視覚的に表現し、独立独歩を旨とする小人達と、小人の存在に気付き何とかコミュニケーションをとりたいと願いつつも決して小人達を脅かすような事をしない大人の思考を持った教養ある一族、そして子ども的思考(他者を思い遣ることなく、自分の興味の為に一直線に行動する等)しか持たない道化役のお手伝いさんが、庭の広い一軒屋で紡ぐストーリー。小人達には広い世界ながら、人間の視点では狭い世界での出来事でしかないそのギャップを上手く物語ったと思いますが、大上段に宮崎駿論を述べた一シーンだけが不要だと思います。
 物語ではお手伝いさんが悪者っぽくなっていますが、アリエッティと翔との関係は破綻することが前提ですから単に物語りの起承転結の為に描かれたに過ぎません。デザイン画と声優樹木希林が見事にマッチしたために、他のキャラクターを差し置いてあまりにも印象深く感じてしまいました。その分割をくったのが大竹しのぶでしょう。どこかのマンガ雑誌の批評で合わないと書かれていましたが、大竹しのぶの声優は悪くないと思います。アニメーション的には良い出来だと思います。ただ、他の主要キャラクターがキャストとイメージが重なるのに大竹しのぶ役のアリエッティの母ホミリーのデザインが、大竹しのぶに合っていないだけだと思います。俳優を起用することによる弊害だと思います。私的には映画を観ていてアリエッティ一家三人が“吹き替え版”にしか観えませんでした。小人と人間の物語は「とんがり帽子のメモル」に止めを刺すでしょう。
 なんとなくですけど、脚本家は短編向けに書いたけれども長編に書き直したような気配を感じました。BGMに助けてもらっているショットが多々有ります。宮崎駿ならば観客に対し、これならばどうだッ!と果敢に挑むが如きアニメショーンの動きを見せる瞬間がありますが、今回はそんな瞬発力のある映像が見当たらなかったのが残念です。「耳をすませば」の近藤監督はその点見せ場を上手く表現していました。
 宮崎駿の下で何がしかを学び、己の内なる声に従い映像作品をつくろうとするとスタジオ・ジブリから独立するしかならないのでしょう。例えるなら庵野秀明や押井守や細田守達。で、ジブリに残っているのは結局宮崎駿の世界感の再現をしたい人々では無いでしょうか。縮小再生産でしかありませんが、アニメーション制作をする工房においては、一人の輝ける才能を持った人物と、その人を支援する人々といったシステム以外をとりようが無いのかもしれません。実写映画で黒澤組や小津組があっても二代目三代目を生み出すにはいたりませんでした。技術を伝達できても才能は伝達できるものでは無いとしか云いようがありません。
 宮崎駿やスタジオ・ジブリから離れて一映画としてはお金を払って映画館で見て損の無い映画としてオススメします。子どもがいたら是非とも家族で見に行ってもらいたいものです。

(以下yahooより引用)
原題: -
製作年度: 2010年
別題: -
製作国・地域: 日本
上映時間: 94分
 解説: メアリー・ノートンのファンタジー小説「床下の小人たち」を基に、古い家の台所の下に暮らす小人一家の物語が展開するジブリ・アニメ。企画は『崖の上のポニョ』の宮崎駿が担当し、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』といったジブリ作品にかかわってきた米林宏昌が監督を務める。舞台を1950年代のイギリスから現代の日本に移した設定と、人間の少年との出会いによって翻弄(ほんろう)される小人の少女アリエッティの運命の行方に注目だ。シネマトゥデイ(外部リンク)
 あらすじ: 古い家の台所の下に住み、暮らしに必要なものはすべて床の上の人間から借りてくる借りぐらしの小人たち。そんな小人一家の14歳、アリエッティは、好奇心と伸びやかな感性を持つ少女。だが、人間に見られないよう、目立たないよう、つつましさと用心深さを求められる毎日を送っていた。
 スタッフ
監督:米林宏昌
製作総指揮:-
原作:メアリー・ノートン
音楽:セシル・コルベル
脚本:宮崎駿 、丹羽圭子
 キャスト
志田未来(アリエッティ)
神木隆之介(翔)
大竹しのぶ(ホミリー)
竹下景子(貞子)
藤原竜也(スピラー)
三浦友和(ポッド)
樹木希林(ハル)


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