木更津駐屯地航空際

木更津駐屯地航空際
2019年12月8日木更津駐屯地航空際にて撮影

2010年12月24日金曜日

野望円舞曲 10巻完結 読了

野望円舞曲 10巻完結 読了
荻野目悠樹/著 田中芳樹/原作 徳間書店/刊 20101231初刷724円 徳間デュアル文庫
 美男美女が国の存亡と己のプライドをかけ、外交と経済と軍事の権謀術数の限りを尽くすスペース・オペラ。どこまで原作者が関わっているのかわかりませんが、原作に田中芳樹が存在しているためか、それとも著者荻野目悠樹による原作者へのオマージュか、日本スペースオペラ界の雄「銀河英雄伝説」を彷彿とさせる完結編の内容でした。
 漢だったら艦隊決戦!
 軍事的浪漫として一軍を率いる夢想をしたりしますが、実際に率いろと云われたら、無理。将どころか艇長とか分隊長も無理。自分の判断で敵も味方も殺してしまうような状況でまともな判断など出来るわけがありません。戦場を生み出さないように全力を尽すべきなのですが、それでは物語にならないので、人々の死に様を通して生き様を描いていくのでしょう。最終的にはハリウッド映画を彷彿とさせる、個人どうしのドツキ合いになるのも致し方ない演出だと思います。松本零士の戦場まんがシリーズにあった、ルーズベルトとヒットラーを決闘させろよ、てこ事です。拙者は軍事行動はソロバンだと思います。階級闘争でもイデオロギーでもなく、単に“お金”の問題。宗教問題であっても民族問題であっても満足に食べていける社会ならば多少の問題はあっても話し合いでなんとかなるのではないでしょうか。反対意見が大勢を占めているのは充分承知しています。映画「武士の家計簿」の中で大村益次郎が語る今後の軍事は補給次第云々ではなく、もっと戦略的意味での“経済”です。例えば現実の米国は21世紀になっても国民が数千人戦場で命を散らしてもビクともしない国力を誇っていますが、日本は米国と違い移民を受け入れていませんから国民の自然増加に任せるしか無い状況で更に少子高齢化している現在、数百人の戦死ですら国内経済に打撃があります。台湾や南朝鮮も似たようなものでしょう。その点北とか中は二束三文赤紙一枚で特攻させても国力に変化が生じないので、戦端を開くのに躊躇しないと考えられます。閑話休題。
 銀英伝以降のスペース・オペラの傑作の一つに「でたまか」シリーズもありますが、今作品との共通項目に電子人格が挙げられると思います。SFの中で延々と語られてきたロボットやアンドロイドといった人間が生み出した人間以上の能力を持つ存在が、ネットワークと云う仮想現実の中で当たり前に存在している世界を、物語創作者ばかりではなく、読者が身近な未来として受け入れている証左なのではないでしょうか。
 統一による安定と、価値観の多様化による危機管理は銀英伝に通底するオチでした。かつての日本の教育基本法と同じ価値観だと思います。
 「双星」シリーズと共に、架空の歴史ながら、時代の流れに翻弄される人々を描いた一大絵巻の傑作をご堪能あれ。銀河の歴史がまた一ページ。

 内容紹介:ボスポラス帝国による圧倒的な軍事力による包囲網。 知将と謳われたジェラルドにも勝つ術のない戦い。 だが、絶対絶命の状況下、エレオノーラは自らの知力と存在を賭けて、立ち上がった──。 執筆開始から約十年──大人気スペースオペラ、ついに最終巻!
 内容(「BOOK」データベースより):ボスポラス帝国の大艦隊が、ついにオルヴィエート本星を攻撃した。しかも、ラムセス星域を消滅させた“思考体”の一派も、活動を始めていた。だが、オルヴィエートの独立をあきらめるわけにはいかない。わずかな艦隊を率いて大宰相ケマル・エヴヂミクに挑むジェラルド。そしてエレオノーラは“嘆きの宙峡”と“金融市場”を武器とした、危険な一手に勝機を賭けた。銀河の命運を決する最後の戦いの結末は…。シリーズ開始から十年を経て辿りついた、あまりにも感動的なラストシーン。巨篇完結。
 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 田中 芳樹:1952年10月22日、熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。1978年在学中に「緑の草原に…」で、幻影城新人賞受賞。1988年「銀河英雄伝説」にて第19回星雲賞受賞。「創竜伝」「アルスラーン戦記」など、多くの人気シリーズがある
 荻野目 悠樹:1965年2月2日、東京都生まれ。横浜市立大学商学部卒業。「シインの毒」で1996年度集英社ロマン大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(アマゾンより引用)


0 件のコメント:

コメントを投稿