東海レトロスペクティブ 読了
野口芽衣/著 マッグガーデン/刊 20101030初版571円 avarus series
博物館展示品を眺めていると、土器や埴輪の一欠けらから全体が復元されている資料を見ることがあります。全体の9割以上を石膏で補充してあるのって、創作なのではないのでしょうか。群馬のとかる古墳時代の資料館に四股をふんでいるように復元された力士埴輪が展示してあったので、係りの方に、何故このポーズに復元したのか聞いてみたら、他の場所から出た埴輪を参考にしたとのこと。埴輪が量産品で広範囲に流通しているものだとは知らなかった拙者は衝撃を受けました。古墳時代はあまり地域間の移動が無く、埴輪等も自給自足経済の地域毎の一品作品だとばかり考えていました。古くは縄文時代から糸魚川流域の翡翠が全国(どころか中国にまで)に流通していたり、日本列島に住んでいた人はどの時代も普通に旅をしていたようです。何故拙者は人々が移動していないイメージを持ってしまったのでしょうか。拙者が何によってイメージを植え付けられたかが気になりだしました。ともあれ、発掘を主とする考古学者の皆さんは欠片から全体像を導き出すだけの知識と想像力を持っていると云う事でしょう。
今作品「東海レトロスペクティブ」は進路に悩んでいる高校生が、たまたま近所の発掘に参加する事で新たな世界を知る成長物語になっています。発掘を始める前に先ず草むしりのシーンから始まるのを見て、著者野口芽衣は経験者に違いあるまいと思いました。果たしてあとがきマンガに考古学専攻と描いていました。発掘するのは鎌倉期の窖窯(アナガマ)。窯の歴史や窖窯の解説だけで1話以上描けられる薀蓄があるだろうに、いともあっさりとマニアックな専門知識は披露せずストーリーが進み、てっきり考古学の薀蓄マンガだとばかり思って表紙買いをしたので、当てが外れました。おそらく編集戦略だったのか、掲載頁数が事前に決定されていたために脚本上削られてしまったのか、残念。
内容紹介:器用ゆえに、進路に迷う高校生・飛鳥。実家の合宿センターにやってきた考古学を専攻女子大生・香乃らに誘われ、なりゆきで発掘調査の手伝いをすることになったが…。(アマゾンより引用)
(月刊コミックブレイド アヴァルス掲載)
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