ダーティペアの大冒険 1巻 読了
たまきひさお/作画 高千穂遥/原作 徳間書店/刊 20101101初版590円 RYU COMICS
録画しておいた「そらのおとしものf」を見たらプロレス・ネタでエンディングにビューティペアが流れていました。原作者の高千穂遥かオリジナル・イラストを描いた安彦良和のどちらが言っていたか忘れましたが、ダーティペアのヒントはビューティペアだとか。
クール&ホットな美女コンビが宇宙狭しと駆け巡り、犯罪を未然に防いだり謎を解決したはずなのが、最終的決算において甚大な被害を与えてしまうストーリー。オリジナルは早川書房刊の小説。日本のスペースオペラの魁となったソノラマ文庫「クラッシャージョー」シリーズと同じ世界設定(時間が少々異なる)にして、戦闘美少女の開祖的コンビ。それまでマジンガーZの弓さやかやコンバトラーVの南原ちずるやガッチャマンの白鳥ジュン等等、特撮モノでは戦隊シリーズのピンクやキカイダーにおけるビジンダーやトリプルファイター等等、画面の彩りとして出てはいてもアクションを主体にしたストーリーにおいて美女・美少女が主役をはるには至りませんでした。しかしてセーラームーンから花開く少女が主役のアクションモノで、先ず売れたのが高千穂遥が書いたダーティーペアではないでしょうか。
クール&ホットのコンビもアニメではプリキュア・シリーズやキディ・シリーズまたパンティーアンドストッキングウィズガーターベルトや小説やマンガでの薬師寺涼子シリーズ(コンビとは云い難いかも)など、昨今では当たり前のように存在するキャラクター的記号(長い黒髪とくせっ毛のショートといった髪型や、冷静に見えて切れると怖いと直情的でオッチョコチョイとか)のパターンも「ダーティペア」でパターンの完成を見たと思えます。
それだけ人気があり影響もありましたので、TVアニメ化やOVAやマンガ化が多数存在し、企画の都合でか主人公達の年齢を若干下げた「ダーティペア・フラッシュ」なども制作されています。
全てに目を通したわけではありませんが、私が一番好きなのは劇場版クラッシャージョー第一作の作中劇中劇として映画館で上映されているガジェットなダーティペアだったりします。断片の見せ場だけであることと、本編とは全く関係の無い映像であるためか力が抜けて好き勝手な事をしている分動きがとても子気味良くて素敵です。
マンガ化で云うと、実はアメリカでマンガ化している「アダム・ウォーレン(Adam Warren)」のダーティペアが好きです。かつて存在していたマンガ専門店「まんがの森」池袋店が輸入モノのアメコミ・コーナーを設置していて何冊か入手しました。英語能力は全く無く、セリフ等は理解出来ませんでしたが、本家と関係なくオリジナルの展開であることは解りました。従来のアメコミにおける確定されたコマ割りではなく、1ページもしくは見開きページでもって演出するコマ割りを見よう見まねで修得しようとしているのもよく解りました。しかし例えるならばフォーマットが異なるソフトを何とかして動かそうとしているような違和感があり、そこがある種のカルチャーギャップとして楽しめます。まるで日本に渡来した油絵や遠近法を修得しようとしている浮世絵師や、浮世絵に影響を受けた印象派やゴッホが油絵で真似をしているのを見るような感じとでも云いましょうか。この隔靴掻痒感が新たな文化の生まれる瞬間の痛痒さなのかもしれません。
アダム・ウォーレンは日本のマンガやアニメにモロ影響を受けた作家らしく、マニアの度合いが酷すぎてプロになったような人で、その初期において箸にも棒にもかかりようがない絵を描いていましたが、好きこそものの上手なれと云いましょうか苔の一念と云いましょうか、今やUSA・OTAKUの大御所みたいです。初期は高橋留美子、ダーティペアの後半は士郎正宗に影響された絵柄になっていました。
結局オリジナル・イラストを描いた安彦良和の完成度があまりにも高く、安彦良和本人にしかマンガとして面白いダーティペアを作る事は出来ないのではないかと思っていました。語るに足るダーティペアのマンガ化は日本国内における影響を受けていなかったアダム・ウォーレンくらいでしたが、やっと21世紀になりマンガとして面白い作品が生まれました。このまま連載が続き著者たまきひさおのオリジナリティが滲み出るようになってくるのが楽しみです。
内容紹介:日本産スペースオペラの嚆矢でもある名作シリーズ『ダーティペア』がコミックに。ちょっと野蛮な美女二人組みの活躍を描くのは、理科系マンガ家にして宇宙作家クラブメンバーのたまきひさお。 惑星ダングルに到着早々、旅客撃墜の濡れ衣を着せられたユリとケイ。なんとか敵の正体を突き止め、本拠地のステーションに乗り込むが、あえなく囚われの身に!どうなる?ラブリーエンジェル!!
著者について:高千穂遙 ●たかちほ・はるか 本作を初めとする「ダーティペア」シリーズや「クラッシャージョウ」シリーズの作者としてだけでなく、「スタジオぬえ」の設立など日本SF界の発展に大きく寄与。 本作の原作『ダーティペアの大冒険』で1980年星雲賞(日本短篇部門)受賞。 たまきひさお 新潟県出身・宇宙作家クラブ所属。ハードSFに関して深い知識を有する。作中における軌道を自分自身で計算してしまう程の凝り性。 自転車に乗っていてギックリ腰になった経験あり。(アマゾンより引用)
(月刊COMICリュウ掲載)
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