2011年5月15日日曜日
ゆうえんちはおやすみ 読了
ゆうえんちはおやすみ 読了
戸田和代/著 たかすかずみ/絵 岩崎書店/刊 20071231第1刷1000円 おはなしトントン9
ネタバレ注意。
“落ち”まで紹介します。
今回ご紹介するのは児童書です。しかも本文中に漢字が出てこないので小学生低学年向けと思われます。
ゆうえんちが休みの日に暇を持て余していた警備員のおじさんの下へ子狐がやってきて観覧車に乗せてくれとねだります。警備員のおじさんがつい乗せてしまったために、今度は妹狐を連れてきてしまい、そして森の動物達までもが来てしまうようになります。
ここまでが起承転結の“起承”です。繰り返すシチュエーションが味噌と云えます。幼児は何故か“繰り返し”を好む傾向にあります。
警備員のおじさんは一回だけだよと繰り返し言いながら動物達を乗せてしまいながら、休みの日になると動物達が来ないか期待するようになり、とうとう来ない動物達に会いに動物達が来たであろう遠方の山を訪ねに行きます。しかし動物達には会えず、夢の中で動物達と警備員のおじさんも乗ったことがなかった観覧車に乗る夢を見て物語りは終わります。
あたたかいストーリーのように思えますが、読後の感想は寂寥感と喪失感が吹き抜けました。例えるならば、そう、映画「三丁目の夕日」1作目で空襲で家族を失った三浦友和演じる実直で街の皆に信頼されている医者が、酩酊すると家族の夢を見るシーンを思い浮かべました。
この物語作中に警備員のおじさんの家族は出てきません。それどころか人間が警備員のおじさん以外に出てこないのです。孤独な、とても孤独な警備員のおじさんが他者と触れ合うであろうチャンスを、日常を守ろうとしたために失い、三度もあった幸運の女神の前髪を掴むチャンスを見逃したあげく、二度と戻らないチャンスを追い求め、己のアイデンティティであるゆうえんちの警備員を休み、動物達を探しに行きます。覆水盆に返らず、夢想することでしか己を慰める事が出来ない男性の見るのは走馬灯のような観覧車の夢だったのです。なんという“虚しさ”!まるで拙者の老後を垣間見たようです。クリスマスキャロルの未来の幽霊のような本に出会ってしまいました。拙者にとっては「星守る犬」の読了と同じです。著者が誰に対して何を書こうとしていたのか、出版社が想定している読者層はどのような感想を持つのか興味が尽きません。
内容(「BOOK」データベースより):けいびいんのおじさんがおおきなあくびをしていると、まどをたたくおとがしました。たたいているのはきつねです。「あれにのせて!」「あれって、あれかい?」きつねはこくんとうなずきました。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 戸田 和代:東京都生まれ。『ないないねこのなくしもの』(くもん出版)で日本児童文芸家協会新人賞、『きつねのでんわボックス』(金の星社)で浜田広介賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
(アマゾンより引用)
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