数えずの井戸 読了
京極夏彦/著 中央公論新社/刊 20100125初版2000円
ぶっちゃけ「番町皿屋敷」。
井戸の中から聞こえる皿を数える声。これは確かに恐ろしい。
無論京極夏彦だから古典的名作を新たな視点で解きほぐし、再構成された傑作。
たまさか偶然に事故とか事件に巻き込まれる人がいます。池袋で歩いていたら射されたり、秋葉原で刺されたり。地下鉄で毒ガスを受けたり。何故こんな目にと問うても答えられる人がいるわけもなく、偶然の積み重ねと云おうが、はたまたそうなる宿命だと云おうが、不幸な目に会ってしまった人の慰めになるわけでもなし。
とある旗本屋敷に、天地人その場その時に集ってしまったが為に生じてしまった悲劇とは。
事件に遭った一人一人の視点を描きつつ、惨劇へ至る過程を丹念に、それでいて緊張感が満ちる潮のごとく徐々にそれでいて確実に人々を溺れさせる様に、宿命と云う名の限界点へと誘う人間模様は、精緻にして大胆、一本一本は独立している糸なのに、縦に横に織り成され布が出来上がるがごとく描かれる鮮やかな人間模様。
『嗤う伊右衛門』の視点の逆転によるどんでん返しや、『覘き小平次』における小平次を軸に廻るそれぞれの思惑、とは全く異なる、サスペンスとも云うべき怪談話。
京極夏彦は天才だわ。
でも早く中善寺のストーリーを進めて欲しいものです。
次回の書き下ろし長編時代劇は鍋島か提灯か。愉しみです。
内容紹介:数えるから、足りなくなる。それは、はかなくも美しい、もうひとつの「皿屋敷」。人口に膾炙し怪談となった江戸の「事件」を独自の解釈で語り直す人気シリーズ第三作。
内容(「BOOK」データベースより)
数えるから、足りなくなる。それは、はかなくも美しい、もうしとつの「皿屋敷」。人口に膾炙し怪談となった江戸の「事件」を独自の解釈で語り直す人気シリーズ第三作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より):京極 夏彦 1963年生まれ。94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で第四九回日本推理作家協会賞(長編部門)、97年『嗤う伊右衛門』で第二五回泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で第一六回山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で第一三〇回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(アマゾンより引用)
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