木更津駐屯地航空際

木更津駐屯地航空際
2019年12月8日木更津駐屯地航空際にて撮影

2010年9月27日月曜日

天地明察 読了

天地明察 読了
冲方丁/著 角川書店/刊 20091130初版1800円
 
 「あそびにいくヨ!」と「世紀末オカルト学園」の最終回が重なってしまった。どちらを録画するか悩む。6:4でオカルト学園か!?

 さて「天地明察」。
 発売以来一年になろうとしている現在においても書店で平積みされている話題の書。
 江戸時代、日本独自の(国内において正確な)“暦”を作り上げた「渋川春海」の一代記。同時代を生きた一流の政治家や文化人達との交わりや支援、師から弟子へ渡される“知”と“想い”、強敵(と書いて友と読む)からの励、そして数々の困難を乗り越え達成される“真理”への道程。時代劇のため難解な漢字も多々出てきますが、武に依らずに世を変えるダイナミックで読みやすい文章と起伏に富んだストーリー。これぞエンターテイメントな一冊。読んで損無し。私は涙無では読めませんでした。
 暦と和算と聞いていたので、「マルドゥック・スクランブル」におけるトランプ・ゲームのように延々と講釈が続くと覚悟していましたが、さにあらず。暦や和算への知識が無くとも充分に楽しめます。おそらく『野生時代』に連載していたので、単行本化にあたり加筆訂正たとは云へ、各話毎に起承転結をそして全体を通しての起承転結を繰り返した結果のリズミカルな盛り上がりとなったのでしょう。
 和算と聞いて思い出すのが、ラジオ講座蛍雪時代で数学を長く担当していた“なべつぐ”こと渡辺次男先生です。予備校でなべつぐ先生の授業を受けていたのですが、他科の先生から、なべつぐ先生は和算の研究もされていて、福島県の予備校で教えるついでに神社に奉納している和算の額を見に行くんだよ、と聞いたような聞いていないような。本書にも渋川春海のパトロンとして会津松平初代藩主保科正之が登場します。和算は会津地方ばかりでなく、その東、阿武隈山地内でも盛んに行われていたらしく、奉納された遺題が現代に残されているそうです。中学だか高校の時には、紙と筆があれば楽しめる和算は安上がりで格好の娯楽だったと、教えられました。ついでに和算は代数や微分積分に近いものではあっても、代数や微分積分とは異なるものだとも聞きましたが、理数系コースでありながら代数も微分も赤点だった私にはどこが違うのか、今もってわかりません。
 さらにパトロンの一人として水戸光圀も出てきますが、キャラクターの描写を読んで脳裏に浮かぶのは原哲夫描く戦国武将みたいな光圀でした。物心付いた時にはTV番組として「水戸黄門」を見ていましたから、どうしても光圀は東野英治郎や西村晃と云った小柄な好々爺をイメージしてしまいます。でも里見浩太朗の方が史実に近いのかもしれません。山本貴嗣が西遊記を元ネタにした「西遊少女隊」の中で三蔵法師を“巌のような男であった”(夢枕獏のパロディでしょう)と書いていたときに、確かに国禁を破り砂漠を越えヒマラヤを越えインドと唐を往復する男がひ弱なわけがありません。手塚治虫の描く野沢那智/声や夏目雅子の演じる三蔵のイメージが払拭された瞬間と同じ衝撃を本書を読んでいて光圀で感じました。
 篠房六郎「百舌谷さん逆上する」6巻のカバー下表紙マンガに「冲方先生との対談」という題の1頁マンガあり。確かに著者冲方丁の活躍を見ると渋川春海ばりの三面六臂の大活躍をしていると思えます。でも「シュピーゲル」シリーズも進めて欲しい。

 内容紹介:江戸、四代将軍家綱の御代。ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること--日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描く傑作時代小説!!
 内容(「BOOK」データベースより):江戸時代、前代未聞のベンチャー事業に生涯を賭けた男がいた。ミッションは「日本独自の暦」を作ること―。碁打ちにして数学者・渋川春海の二十年にわたる奮闘・挫折・喜び、そして恋!早くも読書界沸騰!俊英にして鬼才がおくる新潮流歴史ロマン。
 著者について:1996年、早稲田大学在学中に『黒い季節』で角川スニーカー大賞を受賞しデビュー。以後コミック・アニメとの連動を先駆的に行いマルチな活動を続ける。著作に『オイレンシュピーゲル』『マルドゥック・スクランブル』『ばいばい、アース』などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
 冲方 丁:1996年、大学在学中に「黒い季節」で第1回スニーカー大賞を受賞しデビュー。以後、小説を刊行しつつ、ゲーム、コミック原作、アニメ制作と活動の場を広げ、複数メディアを横断するクリエイターとして独自の地位を確立する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(アマゾンより引用)


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