木更津駐屯地航空際

木更津駐屯地航空際
2019年12月8日木更津駐屯地航空際にて撮影

2010年9月19日日曜日

戦国大名伊達氏の研究 読了

戦国大名伊達氏の研究 読了
小林清治/著 古志書院/刊 20080915第1刷10000円
 「野郎共、パーティだぜッ!!」
のモデルになった“伊達政宗”を中心として政宗までにいたる戦国期伊達氏文献研究書の集大作。
 仙台藩始祖となり平和となった江戸初期を生き残ったため伊達政宗の記録は、父輝宗までに比べ数多く、また政宗自身が筆まめであったため政宗本人による第一級資料が他戦国大名に比べて数多く残っているのが特徴と聞いていました。
 例えば小林清治氏は伊達氏の手紙と、応答した相手の手紙、近隣ばかりではなく累代伊達当主と足利政権や輝宗と織田信長、秀吉政権との応答、小田原北条氏、越後上杉氏等々とを比較対照しています。21世紀の現在ならばコンピュータによるデータベース化が進められており、ネットでも検索可能ですが、コンピュータ化される以前の紙資料を当たるとなると、学術誌は当然として恐らく都道府県市区町村史の資料に当たり古文書目録に当たり更には現地でオリジナルを確認していったと考えられます。その労力たるやいかばかりのものであったか、想像もつきません。
 また伊達氏周辺の戦国大小名についてもかなりページを割いており、戦国期における南奥州の動向がわかるようになっています。
 常陸の佐竹氏が棚倉や白河にまで進出していた事を、この本を読んで初めて認識しました。更に縁組によって葦名氏と結びつく事であの人取橋の合戦(写真人取橋古戦場碑 http://blogs.yahoo.co.jp/akamaty1000/55903476.html)にいたったと。佐竹はあくまで補助勢力だと思い込んでいましたが、実は中核戦力であったわけですね。
 その他学ぶ事は数多く、それがまた楽しくもありましたが、難しい内容でした。イッキに読破できないのでコツコツと読み進めて数ヶ月。それでも古文書の部分は飛ばし読みをしてしまいました。少なからず土地勘もあるので、知らない人よりはイメージが掴みやすかったと思います。482頁で一万円と云う値段も誰もが買える資料とは云い難いでしょう。アマゾンで見ても既に入手不可能ですから、図書館で閲覧するのが良いでしょう。
 マンガやアニメ、ゲーム等で伊達政宗に興味を持ったら、伝記等にいきなり行かず、歴史読本スペシャルとか小説に目を通す事をお勧めします。小説であれば晩年の政宗ですが、司馬遼太郎の「馬上少年過ぐ」がオススメ。短編ながら胸を打ちます。
 戦国時代を駆け抜けた武将の詩やら歌やら数多く残っている中で、秀吉を筆頭に何処かかっこ良過ぎて本人作では無いような気がしなくもありませが、この「馬上少年過 世平白髪多 残躯天所赦 不楽是如何」は、いかにも人生を振り返った文武に秀でた“伊達者”らしさがあるような気がします。

目次
まえがき
Ⅰ 南奥羽の中世と伊達氏

第一章 鎌倉時代の伊達氏
 第一節 伊達氏の成立
 第二節 伊達総領の桑折氏
 第三節 伊達勢力の構成と伊達郡
 第四節 伊達氏の惣領制と支配の様相
 第五節 鎌倉期の梁川地方

第二章 戦国大名伊達氏
 第一節 伊達植宗――大名権力の成立――
 第二節 実元入嗣問題と伊達氏天文の乱
 第三節 晴宗と米沢
 第四節 輝宗の治世

第三章 青年政宗
 第一節 政宗と父輝宗
 第二節 図南の歩武
 第三節 伊達両国と米沢
 第四節 北条と豊臣のはざま

Ⅱ 政宗と重臣・近隣大名

第一章 片倉小十郎と伊達政宗
 第一節 片倉小十郎の誕生
 第二節 政宗との出会い
 第三節 政宗の宰相――智勇の将小十郎――
 第四節 主従交流
 第五節 備中病患
 第六節 死去――仁と義の人――

第二章 上杉景勝と伊達政宗
 はじめに
 第一節 戦国大名、上杉と伊達
 第二節 小田原参陣と奥羽仕置
 第三節 関が原合戦と景勝・政宗
 おわりに

第三章 相馬義胤と伊達政宗
 第一節 家系と婚姻関係
 第二節 出会い
 第三節 抗争激化
 第四節 秀吉と義胤・政宗
 第五節 関ヶ原合戦と義胤・政宗
 第六節 義胤・政宗の最後

Ⅲ 戦国の南奥羽諸氏

第一章 二本松と畠山氏
 第一節 伊達と畠山
 第二節 畠山氏滅亡と伊達氏の二本松支配
 第三節 奥羽仕置と二本松

第二章 戦国末期の長沼
 第一節 蘆名盛氏と長沼
 第二節 佐竹氏の仙道進出と長沼
 第三節 伊達政宗の南奥羽制覇と新国貞通
 第四節 戦国期長沼の村々
 第五節 戦国の大詰

第三章 義親と中世白川氏の終末
 第一節 隆綱(義親)の家督相続
 第二節 佐竹への服属
 第三節 伊達政宗の制覇と白川義親
 第四節 戦国大名白川氏の終末

Ⅳ中央権力と領主支配

第一章 坂東屋富松と奥州大名
 はじめに
 第一節 伊達植宗の礼儀料・礼物進納
 第二節 坂東屋富松
 おわりに

第二章 坂東屋富松と奥州大名:補考
 はじめに
 第一節 天文期の富松与次と与一
 第二節 天文末~弘治期の富松四郎左衛門尉
 第三節 永禄二、三年富松四郎左衛門尉の奥州諸家歴訪
 第四節 その他
 おわりに

第三章 奥州における戦国大名の成立と守護職
 はじめに
 第一節 伊達氏における段銭・棟別銭の開始
 第二節 守護職補任以前における伊達氏段銭の性格
 第三節 蘆名氏における段銭・棟別銭
 第四節 奥州の戦国大名と守護=検断職
 おわりに

補論 塵芥集の世界
 蛇行する阿武隈川/大崎から伊達へ/「塵芥集」の成立/領国の「平和」貫高制の採用/天文の乱/理想主義者植宗/忘れられた法典

故小林清治先生のこと
あとがき

 内容紹介:本書は故小林清治氏(二〇〇七年四月四日死去)が生前に情熱を注がれた伊達氏研究の一部を構成するものであり、小林氏が市町村史等に執筆された伊達氏研究の論考、学会誌に発表された論文を中心に、さらに地域での講演等を付け加えて編集したものである。(まえがきより引用)



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