星系出雲の兵站 1巻 読了
林譲司/著 早川書房/刊 2018年8月25日発行840円 JA1340
かつて(日本における戦後の昭和期)の異星人との戦争は、異星人艦隊と地球人類艦隊の対決みたいな総力戦を描くものだった。異星人は地球人類と差異は無く、文明レベルも断絶があるほどではなかった。そればベトナム戦争以後のSF戦争においては地球人類と価値観を異にする生命体との戦いに変わっていく。これは時代背景と一言であらわせられるが、結局人間の想像力は案外制限があることがわかる。見たことの一歩先を想像する事は出来るが、未だ来ていない事までは想像出来ないだろう。ガンダムが地球連邦軍とジオン公国軍との“内乱”を描いた作品もシリーズが進むにつれ、紛争や動乱などを描くようになる。一年戦争以後地球連邦軍は総力戦を出来なくなってしまっているのだ。
そして本作、シュミレーション小説で名を馳せた著者が描くSF宇宙戦争。その根本はあとがきに詳しい。
第二次世界大戦時の著名なエースパイロットの名は、日本軍は自国だから詳しいとしても、ドイツ空軍からも何人も名が上がる。米軍にもエースパイロットはいるのだが、日独に比べてドラマが少ない。これは正に本書の云うところの「兵站」の問題に直結する。補給が滞り無く行われ、パイロットの数も充分ならば、一人のパイロットが何度も空に上がる必要は無い。米軍は補充も予備戦力も充分にあったから戦うチャンスが少なかった。これは戦争後半の英国にも云える。バトルオブブリテン時にはエースが続々と生まれている。ソ連のエースパイロットも多いが、プロパガンダで何処まで本当なんだか良く分からん。
出雲星系に植民した人類は、母星地球が伝説になるほどの歴史を経ていたが、敵性宇宙人の存在は信じ続け防備を怠らなかった。出雲から更に植民した壱岐星系の外縁で異星文明らしき物体と接触し、人類は調査を開始する。
母星出雲や各植民星、そして最前線となってしまった壱岐星内での数々の政治的軍事的思惑を描く人間ドラマかと思えば、戦闘シーンも盛り込まれ、その戦闘自体が一つの対異星人とのサスペンスとして描かれる、ベテランならではのテーマと演出。
これは続きが気になる作品だ。
(以下アマゾンより引用)
内容紹介:人類の播種船により植民された五星系文明。辺境の壱岐星系で人類外の産物らしき無人衛星が発見された。非常事態に出雲星系を根拠地とするコンソーシアム艦隊は、参謀本部の水神魁吾、軍務局の火伏礼二両大佐の壱岐派遣を決定、内政介入を企図する。壱岐政府筆頭執政官のタオ迫水はそれに対抗し、主権確保に奔走する。双方の政治的・軍事的思惑が入り乱れるなか、衛星の正体が判明する――新ミリタリーSFシリーズ開幕。
内容(「BOOK」データベースより)人類の播種船により植民された五星系文明。辺境の壱岐星系で人類外の産物らしき無人衛星が発見された。非常事態に出雲星系を根拠地とするコンソーシアム艦隊は、参謀本部の水神魁吾、軍務局の火伏礼二両大佐の壱岐派遣を決定、内政介入を企図する。壱岐政府筆頭執政官のタオ迫水はそれに対抗し、主権確保に奔走する。双方の政治的・軍事的思惑が入り乱れるなか、衛星の正体が判明する―新ミリタリーSFシリーズ開幕。
著者について:1962年北海道生まれ。臨床検査技師を経て、1995年『大日本帝国欧州電撃作戦』(共著)で作家デビュー。確かな歴史観に裏打ちされた架空戦記小説で人気を集める。2000年以降は、『ウロボロスの波動』『ストリンガーの沈黙』『ファントマは哭く』と続く《AADD》シリーズをはじめ、『記憶汚染』『進化の設計者』(以上、早川書房刊)『侵略者の平和』『暗黒太陽の目覚め』など、科学的アイデアと社会学的文明シミュレーションが融合した作品を次々に発表している。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)林/譲治:1962年北海道生まれ。臨床検査技師を経て、1995年『大日本帝国欧州電撃作戦』(共著)で作家デビュー。確かな歴史観に裏打ちされた架空戦記小説で人気を集める。2000年以降は、科学的アイデアと社会学的文明シミュレーションが融合した作品を次々に発表している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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