木更津駐屯地航空際

木更津駐屯地航空際
2019年12月8日木更津駐屯地航空際にて撮影

2011年7月29日金曜日

ミッドウェー戦記 読了


ミッドウェー戦記 読了
豊田穣/著 文芸春秋/刊 19730930第2刷600円
 世にファミコンが出る前夜、シュミレーションウォーゲームなるボードゲームが流行った瞬間がありました。六角形のマス目に戦車や飛行機や艦船や歩兵を並べて将棋のように戦いあうゲームです。ゲーム盤にコマを並べて手計算でやっていました。最近のパソコンゲームで近いのは「大戦略」です。と云うかシュミレーションウォーゲームをパソコンに移植したのが「大戦略」の始まりと云って過言ではないでしょう。その前時代はブラモデルを使って遊んでいたようですし、その祖形は司馬遼太郎の「坂の上の雲」で日本海軍が図上演習として行っていたシュミレーションとも云えるでしょう。ガンダムとかボトムズとかロボットものもありました。ナウシカのゲームに至っては手や足を動かすのに手計算で進めていたそうです。で、拙者は当時「航空母艦」と云う上級者向けのゲームを買ってもらいました。おもちゃ屋主催のシュミレーションゲーム大会で聞いたら、愛好家の大学生が一週間掛かりでも終わらないと云っていたシロモノでした。船を一隻ずつ操り、気象条件が毎時変更され、索敵機を一機ずつ飛ばして、敵を見つけ出し、飛行機を発進させて、敵艦を一隻ずつ攻撃するゲームです。これを全て手計算でやらねばならないんですよ。無理。めんどくさい。先ず相手プレイヤーを見つけるのは無理。その点パソコンゲームの「提督の決断」は手軽で面白い。結局拙者はメイン・シナリオである機動艦隊戦をやらずに今までしまってあります。全てのユニット(駒)を切り取っていません。死ぬまでに一度プレイしてみたものですが、その機動艦隊戦のメイン・シナリオが“ミッドウェー海戦”でした。
 双方合わせて百近い艦艇数、六百機を越す飛行機が戦う、史上最大の航空母艦同士の海上航空作戦です。有史以来複数の航空母艦同士が飛行機飛ばしあって戦うのは日本軍と米軍のみ(イギリス海軍の空母と日本海軍の空母も戦ってはいますが)であり、大多数の日本人は知らないから気にしていませんが、世界的に見ると米国に負けたとは云え(日本海海戦を含め)日本海軍恐るべしとなっているようです。日本周辺の国家が、海上自衛隊の空母所持に対しイロイロと口を出すのは歴史的に見て当然と思われます。
 ミッドウェー海戦の概略は“Wikipedia”で確認していただくのが手っ取り早いのでここでは述べません。
 日本帝国海軍海兵68期のパイロットであった著者豊田穣が、海軍の先輩達に取材して、米国側のもまた取材して、作戦に従事した人々の死に様と生還した人々の生き様を描いた力作。拙者的には今もって戦記小説中では一番読みやすい作家です。東京新聞の記者と作家という二束の草鞋を履き続けた結果ではないのでしょうか。元帝国海軍士官として、ミッドウェーの失敗は“時の運”だと云う立脚点もナカナカ。運も実力の内なのですが。戦略的概観やメカニック的な部分の描写や説明は必要最低限とし、“人”のドラマ部分に重点が置かれて書かれているので、ミリタリー的部分に疎くとも楽しめる小説になっていると思います。

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