土偶のリアル 読了
~発見・発掘から蒐集・国宝誕生まで~ 譽田亜紀子/著 山川出版社/刊 20170225第1版1500円
♪1万年と2千年前から愛してる~
「日本」と云う国家が成立した日は記録として残っているのでわかっていますが、ユーラシア大陸の東端にある弧状列島に人が住み始めたのはいつ頃なのか。ナウマンゾウを追って来た狩人がいたのはどうやら確からしいですな。そしていつの頃からか土を焼いて「土器」を作る事を思いついた人がいた。今まで焼く事しか知らなかった人々が煮る事が出来るようになった。無茶苦茶凄いことですよこれは!人類のエポックメイキングと云って良いでせう。
しかもそれが1万5千年前。中国4千年、ホラ吹いて朝鮮5千年、メソポタミヤやエジプトでも7千年前、日本は1万5千年。国ではなくて地域の話ですけどね。
そして日本がセッセと作り続けていたのがフィギュアもとへ「土偶」なわけですよ。何のためにどうして作られたのはわからないけど、ともかく発掘される土で焼かれた人型の数々。しかもどうやら女性を象ったものしか出ないと云う。
本書は各地各年代の土偶について掘り出された地域や状況やその造形美についてコラム風に書かれています。さいたま市のミミズク土偶→ を紹介していないのが残念です。ネタがなかったのか取り上げるまでもなかったのか。
上野国博で開催された土偶展では「仮面の女神」「縄文のビーナス」「縄文の女神」とそろい踏みしていて見事でした。→
真っ当な話は本書を読んでいただくとして、昔上野の博物館でローマ展が開かれたときに自分の女房の墓碑を若い女性がライオンの皮を被った等身大の彫像で飾った像がありました。
高野山の墓群で最近の会社が作った墓碑に、会社関連の彫像やらオブジェが飾っているアレです。古代ローマにおいては、墓を街道沿いに並べて旅人に故人の業績を見てもらっていたと「ローマ人の物語」に書かれていたので、自分の女房自慢をしたかったのでせう。ライオンの皮を人が被るとヘラクレスの例えとなるので、自分のカカアはヘラクレス並に強かった事を表現したと解説されていましたが、拙者は異を唱える。その墓碑を作った人物は「萌え」を解っていたのだ!ただ萌えなる概念が確立していなかったために古代ローマの文法に則って生み出されてしまったのだ。ライオン耳の若い女性像、古代ローマの街道で異彩を放っていたことでせう。だがケモ耳マニアは米国ブレイボーイのバニーガールや日本のアニメだけではなかったのだ。2千年前のローマでも同好の士は存在した。さらにエジプトの彫像を見るとネコとかライオンとかの頭部に人間の胴体の彫像が多数確認できます。なぜ人間の体にしなければならなかったのか、宗教上色々と解説はされていますよ、でもその本質は人間の情動から来ていると考えられませんか。
そして1万5千年前から、日本人は女性フィギュアを作り続けていたのだ。だからこそ、今世界が求めて病まないジャパン・クールが存在できるのだ。人類が文明を持って以来脈々と受け継がれてきたこの「無駄」な努力こそ人が人たる由縁ではなかろうか。いや無論土偶の呪術的意味の方が当時の人々にしてみれば切迫した事情で有り、出来が良ければ良いほど呪力が増したと考えたほうが合理的ではありますが、ここはあえて云おう、オタクである、と。
1万5千年前から日本人はオタクだったんだよ。
(以下アマゾンより引用)
内容紹介:縄文土器や土偶が国宝に認定されたのはそう昔のことではない。たしかに、岡本太郎は縄文中期の土器を絶讃した。しかし一般的には、縄文の考古資料は美的に眺める対象ではなかった。そのなかで、一人の文化庁調査官が縄文を国宝にしたいと動き始める。日本で評価を得られなければ海外に持っていけばいい、その名声を持ち帰ろう、彼はそう考えた。事実、ベルギーでの展覧会では、外国人から「日本にはピカソが何人いるのか」という声が聞かれたほど、大評判だった。日本に帰ってきてから、調査官は一体の土偶の前で「かわいいね」と笑い合う姉妹を目撃する。この土偶しかない。それは長野県棚畑遺跡から出土している土偶、縄文のビーナスだった。1995年、縄文の国宝第一号となった。
なぜか、土偶の周辺には隠れて見えなくなってしまったドキュメントが多い。縄文の人々と土偶との関係も、現代において発見・発掘した人々と土偶の関係もそうである。この本では、発見、発掘、修復、復元、蒐集、文化財指定など、18の物語で土偶の魅力と謎に迫る。さらに、多数のカラー図版とイラストで国宝5体とこれだけは見ておきたい土偶および土製品を紹介。どう作られ、一体何に使われていたのか、そして現代にどうよみがえったのか。おもわず唸る17の物語。あっぱれ、日本の土偶!
出版社からのコメント:どう作られ、いったい何に使われていたのか。そして現代にどうよみがえったのか。国5体とこれだけは見ておきたい土偶と土製品を、多数のカラー図版とイラストとともに紹介する。思わず唸る17の物語。あっぱれ、日本の土偶!
内容(「BOOK」データベースより)どう作られ、いったい何に使われていたのか。現代にどうよみがえったのか。国宝5体とこれだけは見ておきたい土偶を多数のカラー図版、貴重な資料とともに紹介する。思わず唸る17の物語。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)譽田/亜紀子:岐阜県生まれ。京都女子大学卒業。テレビやラジオに出演するかたわら、トークイベントなどで、縄文時代や土偶の魅力を伝える活動を行う
武藤/康弘:1959年秋田県生まれ。國學院大學大学院修士課程修了。博士(文学、東京大学)。現在、奈良女子大学文学部教授。専門は文化人類学、民族考古学
スソ/アキコ:イラストレーター・帽子作家。ギャラリーでの帽子作品の発表と並行して、イラストレーターとしても活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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